夢を食べさせる不思議なレストラン

夜、香港島
銅鑼湾(コーズウェイベイ)、東京でいえば渋谷にあたるのだろうか。深夜まで人が街に溢れている。この街のランドマークタワー、時代廣場(タイムズスクエア)でタクシー降りた。
人の多い香港にあって殊更人が多い。
ここに来た目的は小さなBook&Cafeを覗くためだ。
目的の店は直ぐに見付かった。狭い階段を3階に昇ると小さなドアが左右対称に並んでいる。看板の掛かった左手のドアを開けると珈琲のいい香りに包まれた。不安を覚えるほど細長く狭小な店内。床から天井までうず高く積まれた本は何やら変質的に偏ったタイトルが並んでいる。その多くは大陸では発禁にあたるのではないだろうか。まったりとはしているがスノッブな気配が満ちていた。

次の目的地はレストランなのだが、昼間の暴食が祟りまだ何も食べる気にならない・・・といって人混みをあても無く歩く気にもならず、遠くに行く気にもならなかった。しばらく通りを眺めていたが、同じ様な看板の文字に気が付いた「Foot Massage」。
マッサージの文字を見たとたん、昼間から歩き続けて来た疲労感が鉛を付けたかのように両足を重くした。
外国人にとってローカルなマッサージ店ほどハードルの高いところはなのではないか。なにやら危険な所と感じるのは・・・私だけだろうか!・・・それにここは香港だ(根拠が曖昧)綺麗な女人が出るならいいが、強面のお兄さん達が出て来たらどうーしよう(香港映画見過ぎ)。などと妄想が駆け巡るが、身体は快楽を求め怪し気な階段を上って行った。
始めの心配はよそにローカルマッサージ店は親切対応でリーズナブル料金も嬉しいひと時を与えてくれた。

軽くなった脚と適度に空いた腹をかかえて、この旅最大の目的地「金雀餐廳(Goldfinch Restaurant Ltd)」に向かった。ここは香港では絶対に外せない場所の一つだ。ここは王家衛映画『花様年華』・『2046』の撮影場所として登場するレストランだ。それも1962年創業老舗のステーキハウスである。正直絶賛する味ではないが歴史と伝統を感じる味覚である。こう書くと、わざわざ食べに行く様な所か?と思いになるだろうが、ここは店の雰囲気がお腹も心も満たしてくれる。
いつしか男はトニー・レオンになり。女はマギー・チャンフェイ・ウォンになっている。
夢を食べさせる不思議なレストランなのだ。