二つの日本画展

最近観に行った二つの日本画展。
一つは先輩に誘われ東京駅ステーションギャラリーで観た『没後40年 幻の画家 不染鉄展』。
不勉強で申し訳ないがこの不染鉄という画家を全く知らなかった。
表に張り出されているポスターを見て「ああ、南宋画か!」と勝手に思い込んで入ったが・・・結構独創的な風景画を描いて、それはそれで興味を引いた。
年表を見ると祖父母あたりと世代が近い。お寺に生まれ教職の道に進むあたりは神官の家系に生まれ教職を経て芸術家になった祖父と似ている。
そういったバックボーンを意識して鑑賞すると、また面白く見られるものだ。
写生旅行で行った伊豆で漁師として数年間を過ごすあたりは人間的に魅力的だ。
暮らした土地を描くことが多いようで、伊豆や奈良の風景が多い。
鳥瞰図の構図が多いが、これがまた遠近法など無視していて面白い。もともと日本画に遠近法など関係ないといえばそうなのだが、手前の人物よりも遠くの人物の方が大きいのはどうも違和感を覚えた・・・
長閑かな大和路の四季が綺麗だったがこの時期の日本は戦時中だと思い至ると、また違って見えるものだ。
そういえばこの人の絵には戦争の気配が一切感じられない。ひたすら自分が見たいものだけを見て暮らしていたのだろうか?
そう単純なものでもないだろうが、これだけ作品に打ち込めるというのは羨ましい気がした。

もう一つの日本画展は山種美術館で開催されたばかりの「上村松園 美人画の精華」展。
松園の美人画はなんといってもその顔が美しい!
他の追随を許さない圧倒的な美しさがありますね。
今回の目玉はあの『蛍』です。
ときおり作品の横に松園の著書から抜粋された一文が貼られてありましたが、読むと松園が込めた思いには”楚々とした”とか”清澄な”とか”珠玉”など今ではあまり耳にしない女性を形容した美しい言葉が並んでいました。
思いは見事に描き現されています。
会期中また観に来ようと心に決めました。