「記憶の旅」その1

砂丘の縁を見たことがある。ここから砂丘が始まるという分岐点だ。真っ平らな大地からいきなり砂の絶壁を越えたのである。絶壁は五階建てのビル位あった。突然現れた砂の絶壁を登るとそこに見えたのは見渡す限りの砂丘の連続だった。
初めて見るサハラだった。
駱駝の背に乗るのも初めてだった。駱駝は起用に砂丘の天辺から天辺を伝わり歩いて行った。足元の砂は右に左に次々と斜面を傾れ落ちて行く。駱駝の綱渡り!変な言葉が頭を過ぎる。
駱駝の真似とばかりに自分でも歩いてみた。駱駝は偉かった。砂丘の天辺などとても歩けるものではない、足元の砂は次々と消えていくようである。歩みを止めた途端、身体は右か左の傾斜にずり落ちていく。
西日に照らされ砂に移る自分の影は、駱駝に跨り軽々と砂漠を走っていった。